シティプロモーションの事例紹介

「わたしたちの月3万円ビジネス」を通じて女性が活躍できる機会を創出し、地域に元気溢れるコミュニティを作り出す取り組み(後半)

埼玉県草加市 自治文化部 産業振興課

埼玉県草加市 自治文化部 産業振興課

 前回は、地域の女性のための「わたしたちの月3万円ビジネス」(以下、3ビズ)を実施するに至った経緯と、実際に実施してみて感じられた成果についてお聞きしました。今回は、その成果を踏まえて今後、どのようなことに取組んでいかれるのかについてお聞きしました。

草加市自治文化部産業振興課 髙橋さん(写真右)と本澤さん(写真左)

3万円という目標設定には何か狙いがあるのですか。

 3万円というと、男性から見ると小遣い稼ぎ程度という感覚です。それが、絶妙なところで、男性のいわゆる起業家からすると3万円稼ぎますって女性に言われると、頑張ってということになります。つまり、ライバルではないという感覚ですね。あとは3万円ぐらいの規模感って奪い合いにならない、つまり、誰かのマーケットを取るとかではなく、新たなものを生み出すのにちょうどいいぐらいの規模感なのです。

 とは言いながら一応原則的には目指す方向性があって、月に2日だけ働いて、お給料3万円で利益が確保できる仕事を目指そうということにしています。月2日で3万円というと、実は、20日間稼働すると30万の給料を取れる仕事ということになるので、そのクオリティは本格創業と変わらないのです。ちょっとへそくりがあったら、その範囲でスタートができるわけです。また、場合によっては好きなことは1個とは限らないので、3万円のビジネスをいくつか積み上げていって、例えば、3万円の仕事が10個あれば30万あるとも考えられるわけです。もちろん人によっては1つのビジネスを育ててもいいでしょう。

 そうやって、草加市内でお金を使うための関係性を作っていき、自分が売る側、買う側に立ちながら、それが結果的には草加の産業振興になって、街中でお金が使えるようになっていきます、商店街で買い物をするとか、農家さんから買い物をするような人になってくれること、それが産業振興になるという考え方で進めています。

市として創業に関してその成果の指標としているものはありますか

 創業人数が市のKPIになります。3ビズに関しては、自分の好きなことを形にして続けていこうという意思が示されれば、もう創業ですよということにしているので、今まで、104人受講して102人創業しているという結果になっています。

3ビズは、少ない額でもいいから好きなことやってねということで、どんどん人数を増やしていくという方針なのですね。

 講座の途中で、小グループに分かれてお互いのビジネスをブラッシュアップして、だったらこうした方がいいよってポジティブなアドバイスを繰り返していきます。そんな中で悩んでいる人も、いろいろとお互いの動きを見ながら刺激を受けて、新しい自分に気づく人も多くいます。

 3ビズは、みんなの力を借りて自分と向き合っているという感じなのです。そして、同期が本当に仲が良い。歴代の先輩もいるのでお互いに交わり合いながら、もっと言うと草加市だけじゃなくって、杉戸、宮代、伊奈というように、他の地域でも3ビズを開講し、受講生同士のネットワークができているので、それぞれの地域に訪問してみて地域で受け合ったりとかしながら活動をしています。だから、草加市の中で完結しているわけではないというところも良い点だと思っています。

草加市内にこだわらず、別の地域で商売をしても良いということですね。

 はい、草加市の中だけで地域に目を向けるとしてもたかが知れているわけです。ある意味その近隣も含めた地域に目を向ける、場合によっては、お互いの地域の良いところを認め合って地域同士の合作をしても良いと考えています。

ある意味、ベッドタウンからの脱却というイメージでしょうか?

 おっしゃる通りです。市内での購買率が低いのです。休みの日の子育て世代の草加市内の購買率は2割しかないのです。これ見たときにやっぱり愕然としました。なので、私たちは寝に帰るだけの町からの脱却をキーワードに活動してきました。また、草加市は、住民の意識も「たまたま選んだ場所」という感じで「草加市」だから選んだ、というようにはなっていないため、シビックプライドが低いのが現状です。

 3ビズをきっかけに、草加市のまちへの接点が生まれてくると同時に、ママさんたちの意識が、自分とか旦那にとって、たまたま家を買った場所ではあるけれど、ここで生まれた子供たちにとっては故郷になるから、親としてやれることをやらなくてはと、徐々に変わってきています。

住民とまちの接点を増やす、ということですね。

 普通、自治体の産業振興というのは、会社を呼び込んでくる、つまり、外から引っ張ってくるということで、いわゆる外貨獲得のイメージが強いですよね。もしくは展示会やプロモーションなど、外に行くことが活性化につながる、外から稼ぐんだ、稼ぐんだということになります。もちろんそれも大事なのですが、今までの自治体の産業振興は、そればかりだった気がしています。

 でも、市民の皆さんにとって日常の暮らしの中の一コマ一コマが魅力的で、それが良いというふうに発信できていけば、それ見た人は、それを体感に行こうかということになっていく、つまり、何か内発的なものも必要だということです。外に向けてというよりは、内に向かっていったらこうなったという感じです。なので、私たちは、これを内発的産業振興と呼んでいます。そのためにそういう意識を持った人たちを可視化していこうというのが、草加市の今の段階かなと考えています。

シェアアトリエつなぐばの向いにある八幡西公園

 例えば、ここ(シェアアトリエつなぐば)の向かい側に公園があります。八幡西公園という公園ですけど、ここの公園の維持管理も「つなぐば」がやっています。通常草加市は民間事業者さんを選定し公園の維持管理を委託するのですが、維持管理だけでなく、地域のにぎわいを作ってくださいということも含めて委託をして、年間の占有許可を出しています。公園では普通は商業行為をしてはいけないという自治体はまだまだ多いのですが、この公園を使って稼いでくださいということにしています。ここの公園を会場にウェディングを3ビズメンバーで実施したこともあります。普通の何の変哲もない住宅地の真ん中の小さな公園ですけど、日常の中で温かさに包まれながらウェディングをしたい。と言う人もいるのです。このように、いろんな多様な選択肢を市が用意できるかどうかがこれから大事だと考えています。

多様な選択肢、というのがキーポイントですね。

 どうしても行政というのは、キャッチコピーを1つ決めて、それに従って活動をおこなう傾向にあります。そういったキャッチコピーに頼る気持ちは理解できるのですが、でもそれが一過性で終わることも多い、なかなかやりきるって大変だなと思っています。理想論ですけど25万市民がいたら25万通りの関わりができるまちというのが一番良くて、一番魅力的で1人1人が楽しめるまちなのだろうと思います。そういうまちのためにも、その誰かから与えられたり、用意したものの上に乗っかったりという従来型の都市計画の発想じゃなくて、住民たちがこれが欲しい、これをやりたいって思ったものを1個1個実現していく、それを行政がどうアシストできるのかということの練習を3ビズを通じて私たち行政側がやらせてもらっている感じです。

素晴らしい取り組みと感じました。逆に今後の課題は何かありますか

 3ビズから本格的に創業していく人向けのサポートについて3ビズの卒業生から相談されることがあるので、本格的に会社を立ち上げたいという時に、3ビズの受講生が、本当に会社を立ち上げるというステップに行くための場所を作りたいという気持ちがあります。

 そのような機会を提供するにあたって、本格的な創業を目指す人のための創業塾は、3ビズの受講生にとっては、ハードルが高いと感じてしまうようです。なので、3ビズの受講生がステップアップしたいときに、ゆっくり伴走支援してあげながら本格的な創業につなげてあげる仕組みの提供が必要だと考えています。