シティプロモーションの事例紹介

愛知県豊田市の地域木材活用の取り組み(後編)地元の木材のブランド化に挑戦!

豊田市役所 産業部 農林振興室、一般社団法人ウッディーラー豊田

豊田市役所 産業部 農林振興室、一般社団法人ウッディーラー豊田

今回の事例紹介は、愛知県豊田市にお伺いしました。
豊田市と言えば車の産業を中心とした工業地域を想像する方も多いと思いますが、山間地域が全市の7割もあるのです。その地域にある木材の活用方法が現在注目を集めています。
前編では、このプロジェクトの主体となったウッディーラー豊田のブランド化の取り組みを中心にお話を伺いました。後編は、市役所と民間団体の連携を中心に伺っています。

「愛知県豊田市の地域木材活用の取り組み(前編)」はこちら

一般社団法人ウッディーラー豊田 代表理事 樋口さん(写真中央)
豊田市役所 産業部 農林振興室 森林課 副課長 深谷さん
豊田市役所 産業部 農林振興室 森林課 保全活用担当 河合さん
一般社団法人ウッディーラー豊田の活動拠点でもある豊田市森林会館にて

樋口さんは、どういったきっかけで、ウッディーラー豊田を立ち上げようと思ったのですか?

樋口さん 私はもともと地元の大工でした。建物を建てることはプロでしたが、木材に関してはあまり詳しくはありませんでした。当時使っていたのは輸入木材が多かったので、地元の木材のことなんて、なおさら知りません。そのような中で、地元の木を使っている宮大工の本を読んで感銘を受け、一から木を勉強しようと思い、若いころに修行した材木屋に出戻りしました。ちょうどその時期は、「建物は木造で作ろう」という機運が高まって来た頃でしたが、自分で地元の山の状況を調べれば調べるほどあまり良い状況ではありませんでした。そのようなことがあって、“材木屋は地元の木を使う責任を持ち、木の先生になるべき立ち位置ならないといけない”と思って活動を始めました。残念ながら会社の中ではそのような雰囲気がなかったので、最初は私の個人活動として始めました。

今回の取材場所のウッディーラー豊田の活動拠点でもある豊田市森林会館

え!個人活動だったんですか。

樋口さん そうなんです。地元木材の研究をし続けるにつれて、木に関わるいろんな業種のプロと繋がりました。木こり、木工作家、カフェ、カメラマン、花屋さん、学校の先生など、いろいろな違う業種から10名くらい集まって、そこがユニークでした。

どういった経緯で市役所と連携をするようになったのでしょうか?

河合さん 先ほどもお話しさせていただいたように、森林課が森林の整備事業だけなく、地元の木材の活用に力を入れていくタイミングと、樋口さんの動きがつながりました。

樋口さん ちょうど豊田市としても新規事業に力を入れていく時でした。その時に森林課の方々と一緒に、「地域材利用拡大プロジェクト」という名前でPR冊子を作りました。その中で市民会議などを通して「地域木材に関する窓口が必要だよね」という話が出てきまして、その流れで一般社団法人としてウッディーラー豊田ができました。

官民連携を行なっている自治体は多いですが、お話を聞く限り、こんなに連携をしているところは少ないと思います。連携がうまくいっている理由はありますか?

河合さん パンフレットやホームページ(https://woodealer.jp/member)にも記載がありますが、私たち森林課の職員もメンバーの一員なんです。一番初めの立ち上げの時から、社員として一緒にコミュニーケーションをとりながら参加してきました。

ウッディーラー豊田のミッションと5つの約束(コンセプトブックより抜粋)
「自分たちのミッション」だけでなく「自分たちの身の回りへの約束事」も明確化して、
ホームページやコンセプトブックでしっかりと発信をしている。
コンセプトブックはホームページからも見ることができる https://woodealer.jp/

失礼ながら、市役所の職員の方たちはお名前だけでは無くて、実際に参加もしているのですね。

河合さん 補助金を出すという支援の方法も実際にはありますが、ウッディーラー豊田の活動を、私たちも社員として一緒に行っています。

樋口さん 最初の1、2年目は謎の団体だったと思うんです(笑)。そんな中を一緒に、市の担当の方たちと一緒に営業に行って、お互いの信頼度が高まりました。

営業まで一緒に行ったのですね!それは驚きです。

深谷さん 地元の木材利用を推進するには、営業は必要不可欠になります。行政には営業のノウハウがなく、また販売はできません。そこは民間による動きでないと進みません。ウッディーラー豊田ができて、樋口さん達と一緒に営業ができたのは本当に良かったです。
森林を整備するというと、守りや保守的なイメージが強いと思いますが、豊田市の森林課は「地域の木材を活用していく」を始めとした攻めの取り組みが多いです。このような規模で様々な取り組みをしている体制は、他の自治体さんにはあまりないと思います。

樋口さん 豊田市では、森林課は職員さんたちに人気の部署らしいですよ。

人気というのは意外ですね。営業までやるとなると苦手な方も多いのでは?と思うのですが。

深谷さん 現場仕事もあれば企画もある業務内容がバラエティに富んだ課なので、やりがいのある仕事が多いのが人気の理由だと思います。

樋口さん やりがいがある仕事に惹かれるのは、この地域の特性かもしれません。地元に根ざして「おらが村をよくしたい!」という気持ちを持って行動のできるプレイヤー気質の人が多いです。

思いを持ったプレイヤーの方が活躍しやすい土壌が地域にあるのですね。
プレイヤーがいても、それをまとめていくのも大変だと思いますが。

樋口さん この団体の成り立ちは、“この指とまれ方式”でした。「なんかいいことやっている!楽しそうだな!」ということに引き寄せられて人が集まってきた感じです。そこに行政も集まって来てくれました。自分のやりたいことが個人や団体それぞれにありますが、“この指とまれ“で来たメンバーなので、目指す方向が基本一緒になるんです。「人と木を繋げる」という言葉を使うことで、皆がうまくまとまって動いてくれました。

今日は色々とお話をお聞かせいただきありがとうございました。
今後の抱負や目標がありましたら教えてください。

樋口さん 長い目で見ると、代表である自分が早く引退できる形が良いと思っています。参加しているメンバーが育って、そのメンバー中心の企画でいろいろ活動する状態が健全ですし、影響力も大きくなると思います。いつまでも自分が中心で活動しているのは、自分自身の力が足りないと思っています。それを実現するには、人を育てていくしかないですね。

深谷さん 今日の話からすると成功しているように聞こえたかもしれませんが、まだまだだと思っています。ウッディーラー豊田の活動で、人と地域の木が徐々に繋がり始めましたが、樋口さんがだいぶ苦労しながらなんとかやっているという段階です。樋口さんがやらなくても、うまく回って、さらにいい形で膨らむことが目標です。そのためには、私たち行政ももっと一緒に活動していかなければならないと思っています。

豊田市の山村地域振興の基本計画 おいでん・さんそんプラン(豊田市HPより抜粋 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/042/671/01.pdf
令和3年3月に策定された、2025年までの5年間の山間地域の振興プランの中にも、取組方針4の②に「森林資源の活用による持続可能な森づくりの推進」がある。森づくり人材育成事業として、山の人材育成に力を入れる予定とのこと。