シティプロモーションの事例紹介

我孫子市の動画を効果的に使ったシティプロモーションと効果測定について

千葉県我孫子市 あびこの魅力発信室

千葉県我孫子市 あびこの魅力発信室

今回は千葉県我孫子市のあびこの魅力発信室にお伺いしました。

千葉県我孫子市あびこの魅力発信室長の深田さん

 あびこの魅力発信室長の深田さんは、2019年に関東地区初のシティプロモーションの広域調査(関東5都県シティプロモーション実態調査 https://www.city.abiko.chiba.jp/event/machinodekigoto/abicom/r01katsudo/research.html )を行われた方でもあります。

 今回は「千葉県我孫子市のシティプロモーションの現状」と「広域調査から見た関東のシティプロモーションの現状」の2つについて紹介したいと思います。

千葉県我孫子市のシティプロモーションの現状

まずは我孫子市のシティプロモーションの歴史についてお教えください。

 平成23年から人口減少傾向が始まって、平成25年に定住化策検討プロジェクトが発足しました。そこで、住宅購入意欲のある首都圏住民を対象にウェブアンケート調査を行ったところ、「我孫子市が住宅購入の候補地となるか?」という質問に対して、81.5%もの人が思わないと回答しました。その理由で一番多かったのは「イメージがわかない」の39%でした。
その課題解決のために、あびこの魅力発信室ができ、市内外への情報発信が強化されることとなって、広報経験5年以上の民間人採用を行うこととなりました。そこで採用されたのが私です。

きちんと市場調査を行った上で、シティプロモーションを開始されたのですね。我孫子市のシティプロモーションの目的は「移住定住の促進」と考えてよろしいでしょうか?

 そうですね。広報誌を中心とした通常の広報の業務では市内向けの情報発信を行っていますが、魅力発信室の方では市外向けの移住定住促進に繋がる情報発信を行なうように役割を分担しています。

多くの自治体で住み分けがわかりづらくなっているところが多いですが、我孫子市はわかりやすいですね。深田さんが着任されてからどのようなプロモーションに力を入れてこられたのですか?

 動画やリーフレット、テレビやラジオなどいろいろと行なってきましたが、一番多いのは動画でしょうか。私は元々マスコミ出身なので、得意だったというのもあるのですが、動画の費用対効果がとても良いと思っております。動画を作る上では「配信先」と「継続的な放映」を意識しています。街の魅力を伝えたいがあまり要素を詰め込んで長い動画を作ってしまうと、15秒、30秒程度が基本のTVCMや街頭ビジョンで流すことはできません。「配信先」を考えてから動画を発注するようにしています。配信先によって放映できる長さや、効果的なアピールポイントも変わります

画像は、我孫子市のP R動画「あびこの魅力C M2015」の一コマ。電車の車内ビジョンなどの配信先を意識して、敢えて15秒と30秒という短い時間の動画で制作している。下記の我孫子市のyoutubeチャンネルから視聴できます。https://www.youtube.com/watch?v=q0FVjHOiUBk 

配信先が決まっていないから無駄に長い動画を作ってしまっているところがあるかもしれません。「継続的な放映」はどんなところを意識していますか?

 一度だけ動画で情報を得られても、人の内面は変わらないと思います。繰り返し、観たり聞いたりすることでイメージも変わってくると思います。我孫子市では、地元テレビ局の千葉テレビさんの朝の情報番組で毎月定期的に地元の情報を発信しています。少し話がずれますが、市役所から見える手賀沼は、昔はとても汚く千葉県民には悪いイメージで有名でした。悪いイメージを持っていない若い人が我孫子市に移住することを検討していたとしても、昔の悪いイメージを持ったままの親や家族、親戚はどう思うでしょうか?家族や親族といった関係者が快く思えないところは移住候補から外してしまう可能性がありますので、私たちは繰り返し発信することで、我孫子市のイメージを変えようとしています。

画像は、実際に千葉テレビで放映をしたチバテレあびこナビ10月「住み替えあびこナビ」
の一コマ。我孫子市では千葉テレビで放映した動画もyoutubeにアップをしているので下記のU R Lから見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=9oC-xMtEDFE&feature=youtu.be

 それと、ふるさと大使を務めていただいているナイツの塙さんが出演しているTBSラジオ「土曜ワイドラジオTOKYOナイツちゃきちゃき大放送」でもラジオCMを毎週流しています。その中の1つが2016 56th ACC広告ラジオCM部門ファイナリストを自治体で初めて受賞させていただきました。

ACCで受賞とは本当にすごいですね。深田さんの強みを生かしたプロモーション展開、とても勉強になりました。ところで、我孫子市では効果測定ではどのような指標を使われていますか?

 実際に調査を行っても良いのですが、私たちはブランド総合研究所が行っている全国の自治体を対象とした「地域ブランド調査」の結果を使っています。自分たちのターゲット層にアンケート調査を行うと多額の費用がかかってしまいます。数年に一度しっかりとした調査を行うのは良いですが、毎年多額の費用を使って調査を行うぐらいであれば、その費用をプロモーションに使った方が良いと考えております。その点、こういった地域ブランドランキングを使えば、自分たちが知りたいことを100%知れるわけではありませんが、費用対効果の面で見れば十分に利用できると思っています。その一方で、他にも良い指標が無いか悩んでいるのも正直なところです。そのぐらい、シティプロモーションの効果測定は難しいですね。

私たちの研究会のメンバーは中小企業診断士が多く、民間企業のマーケティング支援をすることも多いです。民間企業のプロモーションの効果測定は、最終的に「売上」や「利益」を見ていけば良いのですが、シティプロモーションはそういうわけにはいかないので難しいと感じています。

 確かに民間企業や売上や利益があるからわかりやすいですね。全国共通するものですから、客観性があり他社との比較も行いやすいです。私も書籍や勉強会等でいろいろな指標を勉強しますが、なかなか現場にフィットしたものは無いですね。